○牧之原市中小企業・小規模企業振興基本条例

平成29年6月23日

条例第24号

牧之原市は、西部・北部に広がる広大な牧之原台地の大茶園を背に、富士山を眺められる県内屈指の海水浴場を持つ海岸地、河川の沖積平野などから構成されている。

また、緑豊かな環境の中、温暖で穏やかな気候にも恵まれ、お茶などの地元特産品や、子生れ温泉などの著名な観光施設が集積し、市域の外周には、「相良牧之原インターチェンジ」、「御前崎港」、「富士山静岡空港」があり陸、海、空のそれぞれの交通インフラが整備され地理的優位性を有している。

この恵まれた環境の中、本市は、周辺地域と良好な関係を築きながらめざましい経済的な発展を遂げてきた。本市の企業の大部分を占める中小企業・小規模企業はたゆまぬ努力によりこうした発展に寄与してきており、今後とも、地域資源が持つ価値を最大限に活用し、雇用を確保、拡大し、市民生活を向上させる地域経済の振興及び活性化のための極めて重要な担い手となるにほかならない。

このような状況の下、中小企業・小規模企業が持続的に成長、発展していくためには、まず自らがその経営向上に努め、地域社会における責任を果たし、市民や社会からより一層の信頼を得ることが求められる。

また、周辺地域の関係者を含めた中小企業・小規模企業の振興を図るためには、全ての市民が、意欲のある中小企業・小規模企業を地域社会全体で支援することの意義について理解を深め、連携し、協力していくことが不可欠である。

ここに私たちは、中小企業・小規模企業の振興を本市の重要な課題として位置付け、これに積極的に取り組み、中小企業・小規模企業の経営基盤の安定化を図り、誰もが働きがいを持ち安心して意欲的に働き続けられる労働環境を整備することで、仕事と生活の調和が取れた安定した生活を営むことのできるまちをつくることを決意し、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、中小企業・小規模企業が地域の農業、漁業等の事業者と共に、伝統技能又は文化の承継に重要な機能を持ち、雇用創出、まちづくり及び子どもの育成に深く関わっている役割の重要性に鑑み、事業者の創業、育成、承継、支援等の事業振興に関する基本事項を定め、その施策を総合的に推進し、もって本市経済の発展並びに市民生活の安定及び向上に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 小規模企業 中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第5項に規定する小規模企業者であって、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。

(2) 中小企業・小規模企業 中小企業基本法第2条第1項に規定する中小企業者であって、市内に事務所又は事業所を有するもの及び前号に規定する小規模企業をいう。

(3) 中小企業・小規模企業関係団体 商工会、中小企業家同友会、中小企業団体中央会、漁業協同組合その他の中小企業・小規模企業の経営に関する支援を行う団体をいう。

(4) 中小企業組合 中小企業団体の組織に関する法律(昭和32年法律第185号)第3条第1項に規定する中小企業団体及び商店街振興組合法(昭和37年法律第141号)に規定する商店街振興組合であり、中小企業・小規模企業を組合員とし、組合員の経済的地位の向上のための共同事業を行う連携組織をいう。

(5) 大企業 中小企業・小規模企業以外の事業者であって、市内に事務所又は事業所を有する事業者をいう。

(6) 金融機関 銀行、信用金庫、農業協同組合その他の銀行業(これに類する事業を含む。)を行う者であって、市内に事務所を有するものをいう。

(7) 教育機関 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校及び同法第124条に規定する専修学校であって、市内に存するものをいう。

(8) 市民 市内に居住し、又は滞在(通勤又は通学を含む。)する者及び市内で事業活動を行う個人又は法人その他の団体をいう。

(9) 創造的な事業活動 中小企業基本法第2条第3項に規定する創造的な事業活動をいう。

(基本理念)

第3条 中小企業・小規模企業の振興は、次に掲げる事項を基本理念として行うものとする。

(1) 中小企業・小規模企業の振興は、自主的な努力による経営の高度化、合理化及び安定化が促進されるように行うことを基本とする。

(2) 中小企業・小規模企業の振興は、創意工夫が生かされる創造的な事業活動等が促進されるように行う。

(3) 中小企業・小規模企業の振興は、経済的又は社会的環境の変化への適応が円滑化されるように行う。

(4) 中小企業・小規模企業の振興は、経営の安定化のための資金及び人材の確保等が円滑化されるように行う。

(5) 中小企業・小規模企業の振興は、市、中小企業・小規模企業、中小企業・小規模企業関係団体、中小企業組合、大企業、金融機関、教育機関、市民その他の関係者の連携及び協力を得て行う。

(基本方針)

第4条 市は、基本理念に基づき、次に掲げる事項を基本方針として、中小企業・小規模企業の振興のための施策を実施するものとする。

(1) 中小企業・小規模企業の創造的な事業活動及び円滑な事業承継並びに市民の創業を支援する。

(2) 中小企業・小規模企業の支援及び経営基盤の強化促進を図るため金融機関等との連携を強化する。

(3) 中小企業・小規模企業の事業活動に必要な人材の確保及び育成並びに労働環境及び労働福祉の向上を支援する。

(4) 中小企業・小規模企業の振興を効果的に実施するための必要な経済調査及び研究を行う。

(5) 中小企業・小規模企業の振興に必要な制度、組織及び拠点の整備を図る。

(6) 市が行う工事の発注、物品及び役務の調達等において中小企業・小規模企業の受注機会の増大を図る。

(7) 中小企業・小規模企業の販路の拡大を図る。

(8) 中小企業・小規模企業の連携及び中小企業組合に係る制度の活用を図る。

(9) 効果的で利用しやすい融資制度の充実その他中小企業者・小規模企業者に対する資金供給の円滑化を図る制度を整備する。

(10) 中小企業・小規模企業と市、中小企業・小規模企業関係団体、中小企業組合、大企業、金融機関、教育機関及び市民との連携並びに協力を図る。

(市の責務)

第5条 市は、基本方針に基づき、総合的な中小企業・小規模企業の振興に関する計画を定め、周知し、及び中小企業・小規模企業の振興のための施策を実施しなければならない。

2 市は、前項に規定する施策の実施に当たっては、必要に応じて、又は機会を捉えて、国、静岡県その他の地方公共団体、中小企業・小規模企業関係団体、中小企業組合、大企業、金融機関、教育機関及び市民に対して必要な協力並びに支援を求めるものとする。

(中小企業・小規模企業の努力)

第6条 中小企業・小規模企業は、基本理念に基づき、次に掲げる事項に積極的に取り組むよう努めるものとする。

(1) 自主的な努力による経営改善又は技術の高度化等を通じて経営基盤を強化する。

(2) 自らが地域において重要な役割を果たしている存在であるという認識の下、人材の育成及び確保並びに地域社会の維持及び発展に寄与するよう努める。

(3) 市、中小企業・小規模企業関係団体その他のもの(以下「市等」という。)が実施する中小企業・小規模企業の振興に関する施策及び事業に協力するよう努める。

(4) 他の中小企業・小規模企業により生産され、製造され、若しくは加工された物品を消費し、又は提供されるサービスを利用するほか、他の中小企業・小規模企業と連携し、及び協力するよう努める。

(5) 教育機関の職場体験活動その他職業に関する理解を深める学習等に協力するよう努める。

(中小企業・小規模企業関係団体の役割)

第7条 中小企業・小規模企業関係団体は、基本理念に基づき、次に掲げる事項に積極的に取り組むよう努めるものとする。

(1) 中小企業・小規模企業関係団体は、中小企業・小規模企業の自主的な努力及び創意工夫による取組をそれぞれの立場で積極的に支援する。

(2) 中小企業・小規模企業関係団体は、市その他のものが実施する中小企業・小規模企業の振興に関する施策及び事業に協力するよう努める。

(3) 中小企業・小規模企業関係団体は、経済的又は社会的環境の変化などにより、高度化する中小企業・小規模企業の経営課題を解決するため、自らの支援機能及び能力の向上に努める。

(中小企業組合の役割)

第8条 中小企業組合は、基本理念に基づき、次に掲げる事項に積極的に取り組むよう努めるものとする。

(1) 中小企業組合は、組合員である中小企業・小規模企業の連携組織として、組合員の経営課題解決に資する共同事業を積極的に展開し、組合員の経済活動の促進に努める。

(2) 中小企業組合は、中小企業・小規模企業と共に、主体的かつ積極的に中小企業・小規模企業の経営の向上に努める。

(3) 中小企業組合は、市等が実施する中小企業・小規模企業の振興のための施策及び事業に協力するよう努める。

(大企業の役割)

第9条 大企業は、基本理念に基づき、次に掲げる事項に積極的に取り組むよう努めるものとする。

(1) 大企業は、中小企業・小規模企業の重要性についての理解を深め、中小企業・小規模企業と連携し、及び協力して事業活動を行うよう努める。

(2) 大企業は、中小企業・小規模企業の振興が本市経済の発展において果たす役割の重要性を理解し、市等が実施する中小企業・小規模企業の振興のための施策及び事業に協力するよう努める。

(3) 大企業は、中小企業・小規模企業により生産され、製造され、若しくは加工された物品の消費又は提供されるサービスの利用に協力するよう努める。

(金融機関の役割)

第10条 金融機関は、基本理念に基づき、次に掲げる事項に積極的に取り組むよう努めるものとする。

(1) 中小企業・小規模企業が自主的に経営基盤の強化に取り組むことができるよう円滑な資金の供給、経営相談及び販路拡大の支援等を行い、中小企業・小規模企業の育成及び発展に協力するよう努める。

(2) 金融機関は、中小企業・小規模企業の振興が本市経済の発展において果たす役割の重要性を理解し、市等が実施する中小企業・小規模企業の振興のための施策及び事業に協力するよう努める。

(教育機関の役割)

第11条 教育機関は、基本理念に基づき、次に掲げる事項に積極的に取り組むよう努めるものとする。

(1) 教育機関は、自主的に、職場体験活動その他職業に関する理解を深める学習等を通じて地域の次世代を担う人材の育成に協力するよう努める。

(2) 前号の規定による協力は、教育機関その他教育に関係するものの自由かつ自律的な意思のみに基づいて行う。

(市民の理解及び協力)

第12条 市民は、基本理念に基づき、次に掲げる事項に積極的に取り組むよう努めるものとする。

(1) 市民は、中小企業・小規模企業の振興が本市経済の発展及び市民生活の向上に果たす役割の重要性を理解し、市等が行う中小企業・小規模企業の振興のための施策及び事業に協力するよう努める。

(2) 市内で生産され、製造され、若しくは加工された物品を消費し、又は提供されるサービスを利用すること等により、中小企業・小規模企業の健全な育成及び発展に協力するよう努める。

(中小企業・小規模企業振興計画)

第13条 市長は、基本方針に基づいて、中小企業・小規模企業振興計画(以下「振興計画」という。)を策定するものとする。

2 振興計画には、中小企業・小規模企業の振興を総合的かつ戦略的に行うための目標、施策その他必要な事項を定める。

3 市長は、振興計画の策定に当たっては、中小企業・小規模企業その他の関係者の意見を反映するための必要な措置を講ずるものとする。

4 市長は、振興計画を策定したときは、速やかにこれを公表し、及び周知する。

5 市長は、中小企業・小規模企業を取り巻く環境の変化を勘案し、及び中小企業・小規模企業の振興のための施策の実施状況を調査・分析し、おおむね5年ごとに振興計画の内容について検討を行い、必要があると認めるときは、これを変更する。

6 第3項及び第4項の規定は、前項の規定による振興計画の変更について準用する。

(中小企業・小規模企業振興円卓会議)

第14条 中小企業・小規模企業関係団体は、本条例に定める基本理念及び基本方針が的確に推進されるよう、中小企業・小規模企業振興円卓会議(以下この条において「会議」という。)を設置する。

2 会議は、前項の目的を達成するため、この条例に定める事項、その実施状況その他必要な事項について自ら調査、検証等を行い、市長に意見を述べることができる。

3 市長は、会議から求めがあったときは、その趣旨に従い、必要な対応を講ずるものとする。

(小規模企業の特性に応じた支援)

第15条 市は、小規模企業がその特性に応じた持続的な発展を図るため、必要な施策を講ずるものとする。

2 市は、中小企業・小規模企業関係団体による小規模企業の特性に応じたきめ細やかな支援が実施されるよう、必要な施策を講ずるものとする。

(財政上の措置)

第16条 市は、中小企業・小規模企業の振興のための施策を実施するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(委任)

第17条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

この条例は、公布の日から施行する。

牧之原市中小企業・小規模企業振興基本条例

平成29年6月23日 条例第24号

(平成29年6月23日施行)